移住から3年が経ち、生活コストの内訳もすっかり安定してきた。今回は、東京時代との比較を交えながら、実際の支出内訳と、季節ごとの変動、生活費を下げるために意識している工夫まで具体的に公開する。

支出カテゴリ別の内訳(月額・合計30万円)

住居費は前述の通り東京時代の家賃20万円から8万円に。食費は、近江町市場などの地元流通や直売所を使うことで、家族3人分でも東京時代の9万円から7万円まで下げられた。この2費目だけで、東京時代との差額の大部分を占めている。

月間生活費30万円の内訳

  • 住居費 8.0万円(26.7%)
  • 食費 7.0万円(23.3%)
  • 光熱・通信・保険 3.5万円(11.7%)
  • 車関連 2.0万円(6.7%)
  • 保育・育児関連 3.0万円(10.0%)
  • その他 6.5万円(21.7%)

費目別に見る、東京時代との差の詳細

住居費と食費以外の費目についても、東京時代との差を項目別に振り返っておく。細かい費目まで含めて見直すことで、生活コストの全体像がより正確に見えてくる。光熱・通信・保険は月3.5万円で、東京時代(月4万円程度)とほぼ横ばいだが、内訳は変化している。通信費は格安SIMへの切り替えで下がった一方、冬場の暖房費(灯油・electricity)が増えたため、年間トータルではほぼ相殺される形になった。

車関連の費用は月2万円で、これは東京時代にはほぼ存在しなかった支出だ。車を持たない生活が当たり前だった東京時代から一転して、車を1台保持する生活に切り替えたことで発生した費目でもある。車検・保険・ガソリン代・冬季のスタッドレスタイヤ交換費用などを月割りにした金額で、地方移住によって新たに発生したコストの代表例と言える。保育・育児関連は月3万円で、この費目は生活スタイルの変化に伴うものであり、移住そのものによる増減とは切り分けて考える必要がある。

「その他」に分類される6.5万円には、日用品費、被服費、交際費、趣味・娯楽費、そして子育て関連の細かい消耗品費などが含まれている。この項目は東京時代(月10万円程度)から大きく減っており、外食や娯楽にかけていた支出が、移住後は自然と縮小した結果だと分析している。特に交際費は、都市部にいた頃と比べて飲み会や会食の頻度自体が減ったことが大きい。都市部特有の「使う機会が多いから使ってしまう」支出が、環境を変えることで自然と減った側面が大きい。

東京時代となくなった支出

  • 満員電車を避けるためのタクシー代(月平均5,000円ほど)
  • 外食中心の生活で膨らんでいた食費(外食費だけで月2万円ほど減った)
  • ストレス発散目的の衝動的な出費

面白いのは、金額として見える支出だけでなく、「使わなくなった支出」があることだ。通勤ストレスや人混みを避けるための出費が、移住後は自然となくなった。これは家計簿上には表れにくいが、生活コスト全体で見ると無視できない差になっている。金額換算しづらいこうした変化こそ、実際に住んでみないと分からない移住のリアルだと感じている。

逆に増えた支出

一方で、冬場の暖房費や、除雪用品・車のメンテナンス費用は東京時代より増えた。地方移住は一律に生活コストが下がるわけではなく、削れる部分と増える部分があることを前提に、支出設計をする必要がある。この増減の内訳を事前に把握しておくかどうかで、移住後の家計管理の精度は大きく変わると感じている。

3年分のデータで見えてきた年間の実態

3回の冬を経験した今、年間を通じた生活費の季節変動もほぼ把握できている。移住した最初の年はこの変動幅を把握できておらず、冬場に予算オーバーすることが何度かあった。夏場は月28万円前後、冬場(12〜2月)は暖房費がかさみ月32万円前後まで増える。年間平均すると月30万円というのが、今の生活費の実感値に近い。東京時代の月間生活費(概算43万円)と比べると、約30%の減少になる。

また、支出の見直しと同時に、収入面でも変化があった。リモートワークにより通勤時間がなくなったことで、副業的な作業に充てられる時間が増え、結果として支出の減少だけでなく、可処分時間の増加という形でも生活の余裕につながっている。この可処分時間の一部を、ブログ運営という新しい取り組みに充てられていることも、地方移住がもたらした副次的な変化の一つだ。

余談だが、外食の機会が減った分、自炊の頻度が増え、結果的に食生活そのものが健康的になったという副次的な効果もあった。生活コストの見直しは、単なる節約以上の変化をもたらすこともあると実感している。生活コストの記録は、地味だが移住検討者にとって一番参考になる情報だと考えているため、今後も定期的に数字を更新していきたい。

「地方移住=生活コストが下がる」という単純な図式ではなく、支出の中身が入れ替わると捉えたほうが実態に近い。次回は、雪国生活で3年間かけて見えてきたことについて書く。

季節ごとの変動費をもう少し詳しく

年間を通じた季節変動について、もう一段詳しく見ておく。夏場(6〜8月)は冷房費が発生するものの、暖房ほどの負担ではなく、月28万円前後で安定している。一方、冬場(12〜2月)は暖房費に加えて、除雪用品の消耗品費(融雪剤・スコップの買い替え等)や、車のスタッドレスタイヤ交換費用が季節的に発生するため、月32万円前後まで膨らむ。この差は年間で見ると約12万円(4万円×3ヶ月)に相当する。

春(3〜5月)と秋(9〜11月)は、光熱費の負担が少ない代わりに、衣替えや行事関連の支出(お祝い事等)が発生しやすい時期でもあり、実質的には夏場よりやや高めの月29〜30万円程度で推移している。年間を通した平均値である月30万円は、こうした季節ごとの波を均してみて初めて見えてくる数字であり、単月の生活費だけを見て「金沢の生活費は安い」と判断するのは早計だと感じている。

生活費を下げるために意識している工夫

住居費のような大きな固定費以外にも、日々の変動費を抑えるために意識していることがいくつかある。1つは、近江町市場や地元の直売所を定期的に利用することだ。スーパーより割安な上、時期によっては東京では手に入りにくい鮮度の高い食材が安く手に入る。もう1つは、冬場の暖房費を抑えるために、入居後に自分たちで断熱シートや隙間テープを追加購入して対応したことだ。この初期投資(数千円程度)は、複数の冬を経て暖房費の節約という形で回収できていると感じている。

また、車の使用頻度を意識的にコントロールしていることも、車関連費用を月2万円程度に抑えられている要因だ。日常の移動は徒歩・自転車を基本にし、車は雪の季節や遠出の際に限定して使うようにしている。都市部の感覚では「車は必要な時にすぐ使えるように」と考えがちだが、コンパクトな街のサイズ感を活かせば、使用頻度そのものを絞り込むことができる。

生活費の記録を続けている理由

こうした生活費の内訳を3年間記録し続けている理由は、単なる家計管理を超えて、将来的な取り崩しフェーズでの生活費設計に活かすためでもある。FIRE後の生活費を見積もる際、季節変動を考慮せずに単月の数字だけで計画を立てると、想定より多くの資産を取り崩す事態になりかねない。年間を通じた実態値を持っておくことは、資産形成の後半フェーズで特に重要になると考えている。