「地方移住してFIREを目指してるって、実際資産は増えたんですか」と聞かれることがある。答えは増えた、で終わらせてもいいのだが、それだと再現性のある情報にならない。今回は、移住直前から現在までの世帯資産の推移を、年単位の数字で公開する。増えた理由を「相場が良かったから」の一言で済ませず、固定費の差額・積立の継続・相場の上下という3つの要素に分けて、地方移住者・リモートワーカーとしての一次情報も交えながら整理していく。

「資産、増えました?」という質問に数字で答える

資産形成系の発信をしていると、この質問は本当によく来る。ただ、多くの人が知りたいのは「増えたかどうか」ではなく「どういう増え方をしたか」だと感じている。一直線に右肩上がりだったのか、途中で減った時期もあったのか。積立額をどれくらい増やしたのか、それとも一定額を淡々と続けただけなのか。曖昧な感想ではなく、年単位の実測値で答えることが、同じように地方移住とFIREを両立させたいと考えている人にとって一番参考になると考え、今回は数字を出す形で記録することにした。

移住直前から3年間の世帯資産推移

東京から金沢に移住する直前の世帯資産は4,200万円だった。そこから3年間、証券口座(楽天証券メイン・SBI証券サブ)でのインデックス積立を継続し、現在は5,800万円台まで増えている。年単位で見ると次のような推移になる。

世帯資産の推移(移住直前を起点とした年単位)

移住直前4,200万円
1年目末4,700万円
2年目末5,300万円
3年目・現在5,800万円台
FIRE目標6,000万円

3年間の増加額は合計1,600万円。年平均では500万円台のペースで増えてきたことになる。ただしこれは毎年きれいに同じ額が積み上がったわけではなく、1年目は500万円、2年目は600万円、3年目は500万円台という、相場の影響を受けた凹凸のある増え方だった。世帯年収1,650万円という土台があってこその数字であり、この増加ペースをそのまま再現できるとは限らない点は先に断っておきたい。

増加を支えた2つの要因:固定費の差額と積立の継続

この3年間の増加を分解すると、大きく2つの要因に分けられる。ひとつは固定費、特に住居費の差額だ。以前、金沢の家賃相場について書いた記事でも触れたが、東京時代の家賃20万円が金沢では8万円になり、月12万円・年間144万円の差額が生まれている。この差額をそのまま積立に上乗せできたことが、増加ペースを押し上げた一番の要因だと感じている。

  • 住居費差額(月12万円)を積立に上乗せしたことによる、投資元本そのものの増加
  • 楽天証券・SBI証券での積立を、移住前から一度も止めずに継続したこと
  • S&P500 50%・NASDAQ100 30%・新興国株20%という配分を、相場の上下に関わらず維持したこと

もうひとつの要因は、単純に「積立を止めなかったこと」だ。当たり前に聞こえるかもしれないが、3年という期間には相場が大きく上がった時期も、下がった時期もあった。その両方を通過してなお積立を継続できたことが、結果的に増加額を押し上げている。暴落局面でも積立を止めなかった経緯は別記事で詳しく書いているので、そちらも参考にしてほしい。

資産の増加額を「相場が良かったから」の一言で片付けると、再現性のある情報にならない。固定費の差額でどれだけ元本を積めたか、相場の上下でどれだけ積立を継続できたか。この2つに分けて考えると、自分の状況に当てはめやすくなる。

相場が良かった年・悪かった年でも積立をやめなかった理由

3年間を振り返ると、年によって相場の追い風・向かい風は明確に違った。直近の相場でも、年初来でナスダック100が既存積立分に対して10%台後半、S&P500が1桁台後半のリターンを記録している月がある一方、月間ベースでは主要指数がマイナス圏に沈む月も混在している。こうした上下は今後も繰り返されるものとして前提に置いている。

積立額を相場に合わせて増減させることは一度もしていない。相場が良い時期に積立額を増やし、悪い時期に減らすという判断は、タイミングを読めるという前提に立った戦略であり、自分にはその自信がない。むしろ、相場が悪化した時期こそ同じ金額で多くの口数を買えている実感があり、機械的に同額を積み立て続けることの方が、自分の性格には合っていると考えている。

地方在住・フルリモートという環境も、この継続に間接的に効いている。通勤時間がなくなった分、相場のニュースを毎日チェックする時間的な余裕ができたが、その余裕を「頻繁に売買する」方向ではなく「積立設定を見直さず放置する」方向に使えたことは、結果的に良い判断だったと感じている。金沢のような地方都市では対面型の金融機関の店舗数自体が少なく、頻繁に窓口へ相談に行くという選択肢が最初からなかったことも、判断を増やしすぎない一因になっていたかもしれない。

FIRE目標6,000万円まで、残り200万円をどう見ているか

現在の世帯資産5,800万円台に対し、FIRE目標である6,000万円まではあと200万円の距離にある。この200万円という数字を見て「もうすぐだ」と感じる人もいれば「まだ遠い」と感じる人もいると思うが、自分としてはどちらの感覚も持たないようにしている。到達時期を具体的に予想することは避けたい。相場が良ければ数か月で到達する可能性もあるし、相場が悪化すれば1年以上かかる可能性もある、という程度の粗い見立てしか持っていない。

目標額そのものより、この3年間で積立を止めずに続けられたという事実の方を自分は重視している。世帯資産のグラフを見返すと、どの年も前年を下回ったことがない。増加額の大小はあっても、後退した年がないという事実は、相場に振り回されずに積立を継続できてきた証拠として、今後も焦らず同じペースを維持する根拠にしている。

なお、FIRE目標6,000万円という数字自体も、当初から一度も動かしていない。世帯年収1,650万円・世帯資産5,800万円台という現在地から逆算すると、生活費30万円ベースでの取り崩しシミュレーションと照らして妥当な水準だと判断して以来、目標額を上下に調整したことはない。目標を頻繁に動かすと、進捗の実感自体が薄れてしまうと感じているためだ。残り200万円という距離感を毎回更新しながら記録していくこと自体が、自分にとってのモチベーション維持の手段になっている。

よくある質問

Q. 地方移住は資産形成にとって本当に有利だった?

A. 自分の場合は結果として有利に働いたと感じている。住居費の差額を中心とした固定費の低下分を、そのまま積立投資に回せたことが3年間の増加ペースを支えた一番の要因だと考えている。ただし収入や家族構成によって条件は変わるため、誰にでも同じ結果になるとは言えない。

Q. 資産が増えたのは相場が良かっただけでは?

A. 相場の上昇が押し上げた部分は間違いなくある。ただ、相場が軟調だった時期も積立自体は止めていない。増加額のすべてを運用成果だけで説明するのではなく、積立を継続できたこと自体を自分の中では評価している。

Q. FIRE目標6,000万円まで残り200万円、いつ到達する見込み?

A. 具体的な到達時期を約束する数字は出していない。相場次第で前後するため、現在の積立ペースを維持しながら、焦らず状況を記録していくつもりだ。