地方移住のハードルとしてよく挙がるのが「仕事をどうするか」という問題だ。今回は、移住前後で実際に取り組んだ、リモートワークの仕事の探し方・続け方、そして転職活動の中で実際に踏みかけた落とし穴について具体的に書く。
移住前にやっておいたこと
移住を決める前に、まず今の仕事がリモートで継続できるかどうかを上司・会社に相談した。IT業界ということもあり、業務内容自体はオンラインで完結するものが多く、フルリモートでの継続が認められた。この「移住前に交渉する」というステップを飛ばして退職・転職を先に決めてしまうと、選択肢が狭まりやすい。
リモート求人を探すときに見ていた条件
- フルリモート可(出社義務が一切ないこと)
- コアタイムの有無(生活リズムの自由度に直結する)
- 評価制度が成果ベースかどうか
特に評価制度は重要だ。「オフィスにいる時間」で評価される文化の会社だと、地方からのリモートワークは不利になりやすい。成果ベースの評価制度があるかどうかを、面談の段階で確認するようにしている。
転職4回で身につけた、求人の探し方の手順
フルリモート求人を探す際は、転職エージェント経由と、企業の採用ページを直接確認する方法を併用している。エージェントは非公開求人へのアクセスや年収交渉の代行というメリットがある一方、「フルリモート可」の条件が実態と異なるケースも過去に経験した。そのため、エージェント経由で候補が出てきた場合も、必ず企業の採用ページや社員のSNS発信を確認し、実際にリモートで働いている社員がいるかどうかを裏取りするようにしている。
具体的な手順としては、まず求人票の「フルリモート可」の記載だけで判断せず、①募集要項に出社頻度の明記があるか、②募集職種以外の社員のリモート実態(SNSや口コミサイトの情報)、③一次面接でのカメラ越しの背景(オフィスにいるかどうか)といった間接的な情報も参考にしている。3社目から4社目への転職では、この裏取りのプロセスを丁寧に行ったことで、入社後のミスマッチを避けられたと感じている。
面接でよく聞かれた質問と、自分の答え方
フルリモート前提の求人の面接では、決まって聞かれる質問がいくつかある。1つは「地方在住でも、緊急時の出社対応は可能か」という質問だ。これに対しては、正直に「頻度が低ければ対応可能」と回答し、年に数回程度であれば新幹線で出社できる距離であることを説明するようにしている。もう1つは「非同期コミュニケーションでの働き方に慣れているか」という質問で、これまでのチャットツール・ドキュメントベースでの業務経験を具体的なエピソードとともに説明することを心がけている。
逆に自分から必ず確認するようにしている質問は、「評価はオフィス出社率ではなく成果で見てもらえるか」という点だ。この質問への回答が曖昧だったり、はぐらかされたりする場合は、実際には出社前提の文化が根強い可能性が高いと判断し、選考の優先順位を下げるようにしている。
働く場所を分けることのメリット
自宅だけでなく、金沢市内のコワーキングスペースを週2〜3日のペースで使い分けている。これは移住してから試行錯誤の末にたどり着いたスタイルで、最初の半年ほどはずっと自宅作業をしていたが、次第にオンオフの切り替えの難しさを感じるようになり、途中からこの使い分けを取り入れた。集中したい作業は自宅、打ち合わせが多い日はコワーキングスペースというように使い分けることで、東京にいた頃のオフィス通勤に近い「オンオフの切り替え」を再現できている。東京時代は往復90分だった通勤時間がほぼゼロになった分、月20営業日換算で約30時間、可処分時間が増えた計算になる。
求人選びで陥りやすい落とし穴
フルリモート求人を探す中で、実際に踏みかけた落とし穴がいくつかある。1つは「フルリモート可」と記載されていても、実際には「入社当初の数ヶ月はオフィス出社必須」という条件が後出しで判明するケースだ。これは契約前の段階で、出社義務が発生する期間・条件を書面(雇用契約書やオファーレター)で明確にしてもらうことで防げる。口頭の説明だけを信じて契約を進めるのは避けたほうがいい。
もう1つの落とし穴は、給与水準そのものより、評価制度がフルリモート勤務者に不利にできていないかという点だ。過去に検討した求人の中には、給与テーブル自体は魅力的でも、昇進・昇給の判断基準に「オフィスでの目に見える働きぶり」が事実上組み込まれているケースがあった。このような会社では、地方在住のリモート勤務者はどうしても評価で不利になりやすい。面接時に「直近でリモート勤務者が昇進した実例があるか」を具体的に聞くことで、この落とし穴はある程度回避できる。
3つ目は、地方特有の求人事情に関するものだ。地方在住であることを理由に、都市部在住者向けの求人よりも選択肢が狭まる、あるいは年収水準そのものが下がる提示をされるケースも一定数あった。この点については、フルリモート前提の求人であれば居住地による給与差は本来生じないはずだという前提を面接で明確に伝え、居住地に応じた給与調整がある会社は候補から外す、という判断基準を持つようにしている。
フルリモートならではの課題
フルリモートだからこそ、意識的にオンラインでの雑談やチームビルディングの機会を作るようにしている。対面の機会が全くない分、意図的に関係構築の時間を確保しないと、孤立感が生まれやすいと感じている。在宅勤務が中心になったことで、通勤という区切りがなくなり、逆にオンオフの切り替えが曖昧になりやすいという課題もある。そのため、始業前後に軽い散歩を挟むなど、生活リズムを保つ工夫を意識的に取り入れている。これらの工夫は地味だが、長期的に働き方を継続するための土台になっていると感じている。
今後の課題
現状の働き方に大きな不満はないが、今の会社に依存した収入構造であることは変わらない。今後は、ブログ運営を含めた複数の収入源を育てることで、リモートワークという働き方自体をより持続可能な形にしていきたいと考えている。地方移住とリモートワークは、あくまでSide FIREへの通過点だと捉えている。転職回数4回の中で得た学びを、今後の働き方の選択にも活かしていきたい。
これから地方移住×フルリモートを目指す人へ
これから地方移住とフルリモートワークの両立を目指す人には、転職活動を始める前に「今の会社でリモート継続の交渉ができないか」を必ず検討することをおすすめしたい。転職には一定のリスク(年収の変動、企業文化への適応等)が伴うため、今の職場でリモート継続の余地があるなら、まずはその交渉から始めるのが最もリスクの低い選択肢になる。
交渉が難しい場合は、今回書いた「フルリモート可」の裏取り方法や、評価制度の確認、契約書での出社条件の明文化といった具体的なチェック項目を、転職活動の初期段階から意識してほしい。これらのチェックを一つでも怠ると、入社後に「話が違った」となるリスクが大きく上がる。転職の軸を年収だけでなく裁量や働く場所に広げる考え方については、別記事でより詳しく整理している。