長男も未就学児と呼ばれる年齢になった。金沢に移住してからちょうど3年、子育て世帯として地方移住したことで支出がどう変わったのか、感覚ではなく数字で振り返ったことがなかったので、今回まとめてみる。「地方移住は子育てしやすい」という言説はよく見かけるが、実際に住んでみると、費用面では単純に「安くなる」とは言い切れない部分もあった。月間の子育て関連支出の内訳、東京時代との比較、そして移住前には見えていなかった自治体差の話まで、具体的な数字ベースで整理する。

「地方は子育てしやすい」は本当か、数字で検証する

地方移住を検討する子育て世帯向けの情報は、住居費の安さを軸に語られることが多い。実際、自分たちの場合も家賃は東京時代の20万円から金沢の8万円まで下がり、その差額は月12万円にのぼる。この住居費の削減効果は別記事で物件選びの視点とあわせて詳しく書いているが、子育て費用というくくりで見ると、話はもう少し複雑になる。

結論を先に書くと、世帯全体の支出は住居費のおかげで大きく下がったが、子育てに直接紐づく費用(保育料・医療費・子ども用品等)だけを切り出すと、東京時代とほぼ同水準か、項目によってはむしろ増えているものもある。この「全体では安いが、子育て費用単体では必ずしも安くならない」というギャップは、移住前にはあまり意識していなかった視点だった。

金沢での子育て月間支出の内訳

現在、未就学児の長男にかかっている月間の子育て関連支出は、おおよそ次のような内訳になっている。月間生活費全体30万円のうち、子育て関連はおよそ4万円前後を占めている計算だ。

  • 保育関連費(保育料・行事費等):約18,000円/月
  • 食費(子ども分の加算分):約8,000円/月
  • 医療費(通院・薬代の自己負担分):約2,000円/月
  • 衣類・おむつ等の消耗品:約7,000円/月
  • 習い事・教材費:約5,000円/月

金沢での子育て月間支出の内訳(円)

保育関連費18,000円
食費(子ども加算分)8,000円
衣類・消耗品7,000円
習い事・教材費5,000円
医療費自己負担2,000円

保育関連費が全体の45%程度を占めており、最大の項目になっている。これは所得水準に応じた保育料の階層区分による部分が大きく、世帯年収1,650万円という水準では、保育料の軽減幅が所得の低い世帯と比べて小さくなる。地方だから一律に保育料が安いわけではなく、所得連動の仕組みは都市部と同じ考え方で運用されている自治体が多い。

東京時代と比べて増えたもの・減ったもの

東京在住時は長男がまだ生まれておらず、子育て費用の直接比較はできない。ただ、同時期に東京で子育てをしている知人・元同僚の話や公開されている自治体資料を参考にすると、いくつか傾向が見えてくる。

  • 減った:保育園の選択肢は東京より少ないが、待機児童の心配はほぼなく、入園申込みのハードル自体は低かった
  • 増えた:習い事の教室数・選択肢が東京と比べて少なく、通える範囲の選択肢が限られる分、1つあたりの単価がやや高くなる傾向がある
  • 変わらない:医療費の自己負担額は、後述する自治体の助成制度次第で東京と同水準かそれ以上に手厚いケースもある

習い事の選択肢の少なさは、移住前に想定していなかった意外な誤算だった。都市部であれば徒歩圏内に複数の選択肢があるところ、金沢では車移動が前提になる教室も多く、雪国という土地柄も相まって冬場は通いにくさが増す。この点は、金沢の雪国生活のリアルをまとめた記事とも重なる部分がある。

「地方移住は子育て費用が安い」というのは半分正解で半分誤解だと感じている。住居費という大きな固定費のおかげで世帯全体の支出は下がるが、子育てに直接紐づく費目だけを見ると、都市部と大差ない、あるいは選択肢の少なさゆえに割高になる項目もある。

医療費助成・保育料の自治体差という盲点

移住前にあまり調べていなかったが、住んでから実感した大きな差が、子育て支援制度の自治体差だ。医療費助成の対象年齢、所得制限の有無、保育料の階層区分は自治体ごとにルールが異なり、同じ「地方移住」でもどの自治体を選ぶかで子育て費用は大きく変わりうる。

金沢市の場合、子どもの医療費助成は一定年齢まで自己負担が軽減される制度があり、通院・入院ともに恩恵を受けている。ただし世帯所得によって助成内容に差が出る仕組みもあり、世帯年収が高い自分たちのケースでは、助成の恩恵が所得制限のない自治体と比べて限定的になる場面もあった。この「所得が高いと支援制度の恩恵を受けにくい」という構造は、FIREを目指して資産形成を進める世帯ほど意識しておく必要があると感じている。

保育料についても同様で、金沢市は所得に応じた階層区分で保育料が決まる仕組みを採用しており、これは全国の多くの自治体と共通する制度設計だ。「地方だから保育料が一律に安い」という単純な話ではなく、結局は世帯所得と自治体の制度設計の掛け合わせで決まる、という当たり前の事実に改めて気づかされた。

移住前に確認しておけばよかったこと

振り返ると、移住検討時に子育て関連でもっと調べておけばよかったと思う点がいくつかある。1つは、保育園の入園しやすさと医療費助成の制度内容を、移住候補地の自治体サイトで具体的に比較すること。もう1つは、小児科・産婦人科までの距離とアクセス手段だ。金沢市中心部であれば医療機関へのアクセスに大きな不便はないが、雪道での移動を考えると、車での所要時間は事前に把握しておくべきだったと感じている。

また、習い事や教育の選択肢の少なさについても、移住前は住居費や生活費の削減効果ばかりに目が向いていて、あまり考慮していなかった。長男がもう少し大きくなり、学校選びや習い事の本格的な検討が始まる段階で、改めてこの点は向き合う必要があると考えている。子育て費用の設計は、資産形成の計画(世帯資産5,800万円台、FIRE目標6,000万円)とも密接に関わってくるため、今後もこのブログで数字ベースの記録を続けていきたい。

固定費全体の見直しについては、住居費を中心とした削減の詳細を別記事にまとめているので、子育て費用と合わせて読むと、地方移住による支出構造の変化がより立体的に見えるはずだ。

もう1つ、実際に住んでみて初めて分かったのが、子育て世帯同士のコミュニティの作りやすさだ。金沢は東京と比べて母数自体は少ないが、その分、地域の子育て支援センターや児童館で同じ年頃の子を持つ家庭と顔なじみになりやすい。都市部にいた頃は近所付き合いがほとんどなかったが、金沢に来てからは長男を通じて知り合った家族と情報交換する機会が増えた。保育園選びや小児科の評判といった「数字に出にくい生活情報」は、こうした地域のつながりから得られる部分が意外と大きい。地元の人とのつながり作りについては別記事でもう少し詳しく書いているので、あわせて参考にしてもらえればと思う。

よくある質問

Q. 地方移住すると子育て費用は本当に安くなる?

A. 住居費の差が大きいため、世帯全体の支出は下がりやすい。ただし医療費助成や保育料は自治体ごとの制度差が大きく、子育て費用単体では一概に「地方の方が安い」とは言えない。

Q. 移住前に子育て関連で確認しておくべきことは?

A. 医療費助成の対象年齢・所得制限、保育園の入園しやすさ(待機児童の有無)、小児科・産婦人科までの距離の3点は移住前に必ず確認しておきたい。自治体によって制度も医療アクセスも差が大きい。

Q. 子育て世帯が地方移住で意識すべき優先順位は?

A. 個人的には、費用の安さより先に医療・保育アクセスの実態を優先して確認すべきだと考えている。費用は後から調整できるが、いざという時の医療アクセスは住んでみないと分からないことも多い。