「地方に住んでいると、お金の相談は誰にすればいいんだろう」と思ったことがある人は少なくないはずだ。自分も金沢に移住してから同じ疑問にぶつかった。結論から言うと、自分はこの3年間、有料のFP(ファイナンシャルプランナー)相談を一度も使っていない。使わなかったこと自体が悪いわけではなく、代わりに何を判断の拠り所にしてきたかを整理する方が、同じように地方でお金の判断に迷っている人の役に立つと考えている。今回は、地方移住者・リモートワーカーの視点から、お金の相談先の実情と、自分なりの判断の仕組みをまとめる。

地方に来て気づいた「相談窓口の少なさ」

東京にいた頃は、証券会社や銀行の店舗窓口、独立系FPの相談会など、対面で相談できる場所が徒歩圏内に複数あった。金沢に移住してから気づいたのは、こうした対面型の相談窓口の絶対数がやはり少ないという事実だ。地元の金融機関の窓口はもちろん存在するが、投資信託や資産運用に特化した独立系FPとなると、東京と同じ密度では見つからない。近隣の商業施設に入っている金融機関の相談カウンターを一度覗いたこともあるが、住宅ローンや保険の相談が中心で、インデックス投資のポートフォリオ設計を突っ込んで相談できる雰囲気ではなかった。

金沢市の消費生活センターや地元自治体が実施する無料相談会も一応調べてみたが、こちらは多重債務や詐欺被害といった消費者トラブルの相談が主軸で、資産運用の方針そのものを相談できる窓口ではなかった。地方都市では「お金の相談=家計や借金の困りごと相談」という位置づけが中心で、「攻めの資産形成をどう設計するか」という相談ニーズに応える窓口は、都市部と比べて選択肢が限られると実感している。この体感は、後述するオンライン中心の情報収集にシフトする決め手の1つにもなった。

この経験は、証券口座の選び方を整理した記事でも触れた「地方移住者はオンライン完結度を重視すべき」という結論と根っこは同じだ。相談窓口も証券口座と同様、地方在住であれば選択肢が限られることを前提に動いた方がいい。

なぜFP相談を使わなかったのか

地方在住でもオンラインFP相談という選択肢はある。実際、無料相談を提供しているサービスも複数あることは知っていた。それでも使わなかった理由は主に3つある。

  • 無料相談の多くが特定の金融商品(保険や投資信託)の販売とセットになっており、中立的なアドバイスかどうかの見極めが自分には難しいと感じたこと
  • 有料相談(1回1〜3万円程度が相場という理解)の費用対効果を、インデックス投資中心の淡々とした積立戦略に対して見出しにくかったこと
  • 世帯年収1,650万円・世帯資産5,800万円台という自分たちの状況では、複雑な商品選定より「入金力を上げて淡々と積み立てる」方針の効果が大きいと考えたこと

FP相談そのものを否定しているわけではない。相続や保険の見直し、住宅ローンの借り換えなど、専門知識が必要な局面では有効だと思う。ただ、自分たちのようにインデックス投資中心でシンプルな資産形成をしている場合は、相談料を払うより自分で判断する仕組みを作る方が合理的だと判断した。

代わりに何を判断根拠にしているか

FP相談を使わない代わりに、判断の拠り所にしているのは主に3種類の情報源だ。1つ目は証券会社が無料で公開している運用シミュレーションツール。楽天証券・SBI証券それぞれの積立シミュレーションで、想定利回りごとの資産推移を定期的に確認している。2つ目は金融庁や日本証券業協会など公的機関が公開している資産形成の基礎資料。中立的な立場からの情報である点を重視している。3つ目は投資に関する書籍で、これは体系的に知識を整理する目的で年に数冊読む程度にとどめている。

重要なのは、これらの情報源を1つに絞らず組み合わせている点だ。証券会社のシミュレーションは商品販売とセットになりやすいため、公的機関の情報で相場観を補正する。逆に公的機関の資料は一般論にとどまりがちなので、証券会社のツールで自分の口座に即したシミュレーションを行う。この組み合わせによって、特定の情報源に偏らない判断ができていると感じている。

地方在住だと「対面で相談できないから不利」と感じがちだが、実際は情報源を自分で組み合わせる習慣がつくことの方が、長期的には資産形成の判断力を鍛える面もあると感じている。

実際のポートフォリオ配分と見直しの頻度

自分たちが実際に積み立てているインデックス投資のポートフォリオは、S&P500連動ファンドが50%、NASDAQ100連動ファンドが30%、新興国株インデックスファンドが20%という配分だ。この配分は開設当初に決めたきり放置しているわけではなく、年1回、年始のタイミングで見直しを行っている。

見直しの際に確認しているのは、値動きに引きずられて配分比率が大きく崩れていないか、という1点にほぼ絞っている。米国株が好調な年はS&P500・NASDAQ100の比率が自然と膨らむため、目標比率から5ポイント以上ずれていれば新興国株を買い増して調整する、という単純なルールにしている。複雑な判断を毎月する必要がないよう、あらかじめルール化しておくことが、相談相手がいない環境で淡々と続けるコツだと思っている。

このポートフォリオの考え方は、インデックス投資戦略についてまとめた記事でも詳しく書いているので、配分の根拠をさらに知りたい人はあわせて読んでもらえるといいと思う。

それでもFP相談が向いている人

ここまで「使わなかった理由」を書いてきたが、FP相談自体を否定する意図はない。特に次のようなケースでは、費用を払ってでも専門家に相談する価値は大きいと考えている。

  • 住宅ローンの借り換えや保険の見直しなど、複数の商品を横断的に比較する必要がある局面
  • 相続や贈与など、税制が絡み間違えると取り返しがつかない判断をする局面
  • 資産運用の経験がゼロで、何から手をつけていいか分からない初期段階

自分たちの場合は、転職を4回経験する中で会社の福利厚生や退職金制度を都度自分で調べる習慣がついていたこともあり、資産運用についても同じ姿勢で情報収集できた。この土台がなければ、最初はFP相談を使う選択肢を取っていたかもしれない。キャリアと資産形成の関係を整理した記事でも触れているが、仕事で培った情報収集の姿勢が、そのまま資産運用の判断力にもつながっていると感じている。

もう1つ付け加えるなら、地方移住を検討している人ほど、移住前にFP相談を1回使っておく価値はあると思う。理由は単純で、移住によって住居費・生活費の構造が大きく変わるタイミングだからだ。自分たちの場合、金沢の家賃は8万円、東京時代は20万円で、月12万円分の固定費が浮いた計算になる。この差分をどう資産形成に振り向けるかという設計は、移住直後の一度だけでも専門家の目を通しておくと安心材料になる。実際にはFP相談を使わなかったが、これは「不要だった」というより「自分たちの状況では自分で判断できる範囲だった」というだけの話で、家族構成やリスク許容度が違えば結論も変わってくるはずだ。

よくある質問

Q. 地方在住でもFP相談は受けられる?

A. オンライン相談に対応するFPは増えているため、地方在住でも相談自体は可能。ただし店舗型の対面相談は都市部と比べて選択肢が少ないのが実情。

Q. FP相談を使わない代わりに何をしている?

A. 証券会社が無料で公開している運用シミュレーションと、書籍・公的機関の情報で自分の判断根拠を作り、年1回ポートフォリオを見直す運用にしている。

Q. 地方移住者がお金の情報収集で意識すべきことは?

A. 対面相談窓口の少なさを前提に、オンラインで完結する情報源を複数持っておくこと。1つの情報源に依存せず、公的機関・証券会社・書籍を組み合わせるのがおすすめ。